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資料館所蔵資料紹介-16

資料館には、明治5年の博物館の創設以来、収集、蓄積してきた貴重な資料が数多く所蔵されています。2009年7月より展示コーナーを新設し、資料館の所蔵資料について皆様に知っていただくため、種類別にご紹介をしています。


第16回 東京国立博物館の刊行物-(草創期から東京帝室博物館まで-続) 

今回の展示は、東京国立博物館の刊行物のうち、草創期から東京帝室博物館の時代に刊行された、展覧会や平常陳列の目録類、案内を取り上げます。

初期の博物館においては、展示の案内を兼ねた列品目録が明治13年(1880)から断続的に出版されています。内容は歴史関係や天産関係(植物・動物)の資料が中心となっています。

明治33年(1900)パリで開催された万国博覧会の際に御物を含む日本の古美術品が出品され、翌年その出品物による特別展覧会を博物館で開催して以降、特別展覧会が始まり、その目録も作成されるようになりました。

大正天皇の御慶事奉宿祝記念として明治42年(1909)に表慶館が開館した後、特別展覧会は主に表慶館で行われました。

大正12年(1923)の関東大震災によって表慶館以外の建物が使用不能となったため、本館が復興するまでの間は表慶館が唯一の展示館となり、展示面積の縮小への対応策として、テーマによる特別陳列も頻繁に行われました。また、大正13年(1924)からの「帝室博物館案内 絵画部」とそれに続く、昭和10年(1935)からの「美術及工芸陳列案内」といった平常陳列の案内は、昭和12年(1937)までほぼ毎月刊行されました。

昭和13年(1928)に、6年の歳月と巨額の工費をかけた復興本館が開館し、1冊本の陳列案内とともに、表慶館を含めて計9冊の陳列区分毎の目録が刊行されています。

復興開館以後の大規模な展覧会としては、昭和14年(1939)ベルリンで開催された特別展の帰国展、および正倉院宝物が初めて公開された昭和15年(1940)の正倉院特別展覧会があります。

戦時下においては美術品の疎開などで展示にも影響を受け、特別展も戦時色の濃いものが行なわれましたが、昭和20年(1945)3月10日からは休館となり、戦後の開館まで1年間休館することになります。戦前の目録はこの年まで刊行されています。

 今までに紹介した目録類は、いずれも小冊子か1枚物の体裁で、図版数も限られ、図版の代わりに絵葉書が刊行されているものもあります。しかし過去の展覧会の内容を伝える記録としてこうした資料は博物館にとって重要なものであり、保存状態に注意して後世に伝える必要があります。資料館では、保存上これらの貴重な資料をマイクロ化し、Webでの公開も行う予定で準備中ですが、現在はマイクロフィルムでの閲覧をお願いしています。

<展示資料>
1 『第1回特別展覧會目録』
  東京 東京帝室博物館, 明治34年(1901)4月                    TT-1901-1
2 『東京帝室博物館案内 大正14年1月』 
  [東京] 東京帝室博物館, 大正13年(1924)12月                  TT-1925-4
3 『東京帝室博物館復興開館陳列案内』          
  [東京] 帝室博物館, 昭和13年(1938)11月                    TT-1938-9
4 『正倉院御物特別展観目録 : 紀元二千六百年記念』
 [東京] 帝室博物館, 昭和15年(1940)11月                     TT-1940-8

<展示期間>
2011年11月1日〜12月27日