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資料館所蔵資料紹介-15

資料館には、明治5年の博物館の創設以来、収集、蓄積してきた貴重な資料が数多く所蔵されています。2009年7月より展示コーナーを新設し、資料館の所蔵資料について皆様に知っていただくため、種類別にご紹介をしています。
第15回は、東京国立博物館の刊行物(草創期から東京帝室博物館まで)を取り上げています。


第15回 東京国立博物館の刊行物(草創期から東京帝室博物館まで) 

 東京国立博物館は、文部省博物館が湯島聖堂で博覧会を開いた明治5年(1872)を創立の年とし、所管を文部省博物局、内務省農商務省と変えた後、明治19年(1886)からは宮内省の所管となり、戦後は国立博物館となって、文部省の所管となりました。その長い歴史の中で様々な資料を刊行してきました。
 草創期の博物館で編纂、刊行されたものは物産関係のものが中心で、ウィーン万国博覧会の出品勧誘の際に諸府県に提出させた物品調書をもとに博覧会事務局がまとめた『蒟蒻集説』(明治5年)などがあります。
 明治8年(1875)3月からの内務省時代の博物館は、博覧会事務局時代に集められた物産関係の図説を再編集して『教草』(明治9年)として刊行するなど引き続き博物関係の書籍を刊行しています。また工芸関係は『工芸百図』、『工芸史料』、『英国ドクトルドレッセル同行報告書』、考古学関係では『博物叢書』として『穴居考』や『上代石器考』などが刊行されました。目録類の刊行もこの時期から始まり、『博物館列品目録』や『博物館書目』、明治13年(1880)に博物館が主催した観古美術会の出品目録等が刊行されています。
明治14年(1881)4月からの農商務省時代は、内務省時代に続き、『博物館列品目録』の史伝部・軍事部、工芸部および芸術部が刊行されています。『増補考古画譜』の刊行もこの時期に始まっています。
 明治19年に博物館は宮内省に移管され、同22年(1889)には帝国博物館官制がしかれて帝国博物館となり、同33年(1900)には東京帝室博物館となります。館の性格が美術博物館として変化したのもこの時代であり、帝国博物館時代には、日本美術史の編纂に着手していることが特筆されます。東京帝室博物館時代は、明治33年の第1回特別展覧会の開催以後、ほぼ毎年特別展覧会が開催されて目録や図録が刊行されるようになり、また大正8年(1918)に『帝室博物館学報』、大正14年(1925)に『帝室博物館講演録』なども刊行が開始されています。
 現在、戦前の刊行物は、すべて図書として整理されている訳ではなく、初期の刊行物や木版の一枚摺などは、博物館の列品(所蔵品)として扱われているものもあり、また文書類は、館史資料としてまとめられています。また図書として区分されている中にも、展覧会の出品目録や、所蔵品(列品)目録類、複製本など、一般図書とは別に整理されているものもあります。今回の展示は、一般図書として整理されている中から、戦前の東京帝室博物館時代までの刊行物を3点選んで展示します。
<展示資料>
1 『工芸志料 上』黒川真頼著
  [東京] 博物局, 明治11年(1878)10月    150-5
2 『織文類纂 巻5』帝国博物館編
  [東京] 有隣堂, 明治25年(1892)1月   153-56
3 『帝室博物館図録 第4輯』          
  東京 帝室博物館, 大正15年(1926)9月  000-B1
<展示期間>
2011年9月1日〜10月28日