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資料館所蔵資料紹介-11

資料館では、2009年7月より展示コーナーを新設し、資料館の所蔵資料について皆様に知っていただくため、種類別にご紹介をしています。第11回は、文化財建造物の修理工事報告書のご案内をさせていただきます。

第11回 文化財建造物の修理工事報告書 

 明治初期の急激な社会変革の中で危機にさらされた社寺の所有する宝物や建造物を保護するため、明治30年に古社寺保存法が制定され、社寺所有の重要な建造物を特別保護建造物、宝物を国宝として指定し、保護する制度が始まりました。昭和4年の国宝保存法においては、建造物も宝物と同じく国宝と称されるようになり、保護の対象は社寺建築以外にも拡張され、城郭建築、霊廟建築、あるいは書院・茶室などの住宅建築も指定されるようになりました。
昭和25年の文化財保護法制定以降、民家や明治以降に建造された近代建築などの一般の建造物にも本格的に保護が講じられるようになり、さらに昭和50年の文化財保護法の改正によって、土木構造物を含む近代の建造物が幅広く保護の対象となりました。
 文化財建造物としての価値を維持するために、長期的な保存修理は欠かすことができず、その修理は文化財としての価値を損なわないように実施される必要があります。文化財指定建造物の修理は、国の直営事業あるいは管理団体への補助事業として行われ、大規模な保存修理には、昭和初期から克明な修理工事の報告書が刊行されるようになっています。報告書は、修理工事の概要や経過を示すとともに、調査によって得られた知見やその分析、現状変更の内容等を、詳細な図面や写真とともに記録し、学術的にも価値が高いものですが、発行部数が極めて限られているという特徴があります。
 資料館では、地方指定の文化財の修理工事報告書を含め、約2000冊を超える文化財建造物の修理工事報告書を所蔵し、都道府県別に整理をしています。今回はその中から3点を選んで展示いたします。

<展示資料>
1 『国宝建造物東大門修理工事報告(法隆寺国宝保存工事報告書 第1冊)』 
   [東京] : 法隆寺国宝保存事業部 昭和10年 (1935)3月                131-K65-125                 
2 『厳島神社国宝並びに重要文化財建造物昭和修理綜合報告書』国宝厳島神社建造物修理委員会編 
   [宮島町 (広島県)] : 国宝厳島神社建造物修理委員会 , 昭和23年(1948)3月     131-K76-6
3 『国宝建造物醍醐寺五重塔修理工事報告書 』 京都府教育庁文化財保護課醍醐寺五重塔修理事務所編
   [京都] : 京都府教育庁文化財保護課 , 昭和35年(1960)1月           131-K62-66

<展示期間>
2010年12月1日〜2011年1月28日