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資料館所蔵資料紹介-12

資料館では、2009年7月より展示コーナーを新設し、資料館の所蔵資料について皆様に知っていただくため、種類別にご紹介をしています。第12回は、美術全集のご案内をさせていただきます。

第12回 美術全集 
 
 明治維新における神仏分離政策に端を発した廃仏毀釈などの文化財の危機に対応して、明治政府は、明治4年(1871)に「古器旧物保存方」を布告、明治21年(1888)には宮内省に臨時全国宝物取調局を設けて全国の社寺の宝物調査を実施し、この結果を基に明治30年(1897)古社寺保存法が成立し、社寺の建造物と宝物が登録される制度が誕生しました。明治23年(1890)からは東京美術学校での岡倉天心による日本美術史の講義が始まり、日本美術史の枠組みが固められつつありました。また、明治33年(1900)のパリ万国博覧会を機に、帝国博物館の岡倉天心、福地復一らの編集による最初の官製美術史として仏文版「Histoire de l'Art du Japon」が、翌34年に日本語版「稿本日本帝国美術略史」が刊行されました。
 こうした流れの中で、最初の美術全集(作品集)ともいえる「真美大観」が明治32年(1899)から明治41年(1908)年にかけて出版され、それを引き継いで同じく審美書院から「東洋美術大観」が明治41年(1908)年から大正7年(1918)にかけて刊行されました。これらは、近代国家としての日本が欧米列強に対抗し、優れた文明国であることを示すものとして、多くは海外を意識して作成され、印刷・製版技術の面では、コロタイプ製版技術や木版多色摺など当時の最新・最高の技術が用いられていることが特徴です。
 近年これらの図録は、日本美術史の成立や、個々の文化財がいかに語られてきたかを物語るものとして研究対象ともなり、また当時の印刷技術を示す資料としての価値も注目されています。
 資料館は、上記の他にも明治から戦前にかけて刊行された美術全集、図録類を数多く所蔵しています。
 今回は明治期の美術全集、図録類から2点を展示します。

<展示資料>
1 『日本精華 第1集』
奈良 : 工藤利三郎, 明治38年(1908)5月 102-B16
2 『特別保護建造物及国宝帖 第2帖』 内務省編纂
東京 : 審美書院, 明治43年(1910)3月 131-C1
<展示期間>
2011年2月1日〜2011年3月28日